11月8日みんなやさしくなった
「抱きしめてBIWAKO」報告集編集委員会/編
発行年月:1988年11月
ページ数/版型:153ページ/21cm
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(本書冒頭より引用)
第一びわこ学園。1963年に重度心身障害児のための療育
施設として創設されたこの学園は全国で二番目に古い歴史を
もつ。学園の生みの親のひとりである故・糸賀一雄は「この子
らを世の光に」と語った。ここを訪れ、重い障害と闘いながら
生活している子供たちに出会ったひとたちは、子供たちの懸
命に生きる姿からあらためて、<いのち>の意味を学びとる
という。
『ふつうの生活を社会のなかで』と題した学園の将来構想が
まとめられたとき、びわこ学園の子供たちに<いのち>の美し
さを教えられた人々の間から動きがおこった。学園の移転新
築のための費用は16億円、うち自己資金として必要な6億5
千万円の一部を募金しようという計画である。
「ありがとう いのち」
これまで数知れぬ生命をはぐくんできた水、生命の源泉で
ある水を豊かにたたえる琵琶湖を抱きしめることで、<いのち
>を抱きしめよう。琵琶湖とじかに向かいあうことで、自然と人
間のありようをもういちど問いかえしてみたい。
手をつなぐ一人ひとりがかけがえのない<いのち>であるこ
と、かけがえのない<いのち>のつながりのなかで一人ひとり
の生活があり福祉があることを問いかける場として<抱きしめ
てBIWAKO>が企画された。
琵琶湖の周囲250キロメートル。25万人の参加者に参加費
1000円を負担していただき、その収益金をびわこ学園の移転
新築費用の一助にできればという思いを込めてである。
そして、1987年11月8日正午・・・。
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(配送員のひと言メモ)
滋賀に来て、はじめて「抱きしめてBIWAKO」のことを知りました。
びっくりです!!なんと20万人以上の人びとが琵琶湖をぐるっと
取り囲んで手をつないだんです!!アンビリーバボーとはこのこ
とでしょう。信じられない、想像を超えた事実です。(県民の7割が
せっけんを使っていたという事実に匹敵する驚愕の社会現象です)
元々、芸術の分野に身をおいていた者からすると、これはまさに、
空前のスケールで実現したパブリックなアート・パフォーマンス!!
とは言え、「抱きしめてBIWAKO」の発端は福祉の領域です。ただ
し当時を知る人びとに聞いていると、これが実現した背景には、福
祉の領域を超えた広範囲な人びとの連携があったのが事実のよう
です。そして、そのネットワークを生み出したことのひとつに、1970
年代後半から広がった滋賀の「せっけん運動」があります。
そして、更に、この「抱きしめてBIWAKO」が実現したことに後押し
されて、福祉分野、環境分野それぞれに、次なる市民事業が本格
的に産声をあげていきます。そのひとつが「環境生協」であり、また
ひとつが「しみんふくし」です。(私が知らないだけで、他にもあること
でしょう。)
滋賀には、ほんまにエキサイティングで驚くべき市民運動の流れが
あります。21世紀、これから先の未来、市民が主体的に行動し、判
断してあるべき社会を構築していく時代を目指すとき、学ぶべき姿が
滋賀のここ20~30年の歴史の中にあるようです。
過去に学び、何かしらを受け継ぎながら、未来をつくっていきたいも
のです。
超おススメの1冊です♪